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I can speak
作品を、もう少し知る
失った歌、製糸工場から聞こえる声、夜道の英語がつながる流れと、ことばや時代を短くまとめました。
文章の流れを振り返る
「私」は自分の歌を失い、東京で何もせずに過ごしたあと、「生活のつぶやき」のような文章を書き始めます。御坂峠で長い小説に取りかかりますが、寒さに耐えられず甲府へ移り、下宿で仕事を続けます。
下宿の近くには製糸工場があり、働く女性たちの歌が聞こえてきます。なかでも際立つ一人の声に励まされた「私」は、礼を伝えたいと考えます。ただ、自分が声の主へ近づけば、無心の歌を変えてしまうかもしれないと思い、何もしません。
二月の夜、「私」は工場の小路から、酔った若者が姉へ英語を話す声を聞きます。若者は、母に内緒で夜学へ通っていることや、偉くなりたいことを語り、姉に自分はよい子だと言ってほしいと求めます。その英語に撃たれた「私」は、忘れていた歌を思い出したように感じます。最後まで、姉と歌声の主が同じ人かどうかは分かりません。
本文から分かること
冒頭の「私」は、自分の歌が声を失ったと書きます。その後に製糸工場の歌が聞こえ、若者の英語を聞いた終盤では、忘れた歌を思い出したように感じます。歌と声と言葉が、文章の離れた場面をつないでいます。
「私」は、際立ってよい声の女性の顔も名前も知りません。感謝を伝えたい一方、礼を言えば無心の歌を濁らせるかもしれないと考え、会いに行きません。さらに、それが恋かもしれないとも書きますが、答えは出していません。
若者は英語を繰り返し、夜学へ通っていることや、いつか出征すると話します。ただし、出征はまだ決まっていないと自分で言い直します。自慢だけでなく、姉に自分を認めてほしい気持ちも、同じ会話の中に表れています。
若者の英語を聞いた「私」は、「はじめに言葉ありき」と続けます。本文は、その一言が忘れた歌へつながったと書きますが、なぜそれほど強く響いたのかを一つの説明には決めません。
最後の一文で「私」は、若者の姉が、いつも聞いていたよい声の人かどうかは知らず、おそらく違うと考えます。二つの声を同じ人物へまとめないまま、文章は終わります。
ことばと時代
- 陋巷
- 「ろうこう」と読み、狭く、むさくるしい町や小路を指すことばです。冒頭では、つらさや諦めを重ねたあとに、幸せも陋巷の中で見つけたと書かれます。
- 夜学
- 夜間に学ぶことや、夜間に授業を行う教育課程・学校を指します。若者は、母にも内緒で夜学へ通っていると姉へ話し、その会話の中で英語を繰り返します。
- 出征
- 軍隊に加わり、戦地へ行くことです。若者は自分もいずれ出征すると話した直後、まだ決まっていないと言い直します。作品が発表されたのは1939(昭和14)年です。
- 作品の舞台と発表
- 本文は御坂峠から甲府へ移った「私」を描き、甲府の下宿と近くの製糸工場を主な舞台にします。『I can speak』は、1939(昭和14)年2月号の雑誌『若草』で発表されました。
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