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文字禍
作品を、もう少し知る
文字の精霊を調べる流れ、老博士の調査と矛盾、歴史をめぐる問答を短くまとめました。
物語を短く振り返る
古代アッシリヤの図書館で、夜になると文字の話し声がするという噂が立ちます。大王に調査を命じられた老博士ナブ・アヘ・エリバは、一つの文字を長く見つめ、線の集まりにしか見えなくなる体験をします。博士は文字の精霊がいると考え、人々の不調や能力の衰えを調べ始めます。若い歴史家と、過去の出来事と粘土板に書かれた歴史との関係を話し合います。博士は文字の害を報告して大王の機嫌を損ね、最後には地震で倒れた書架と粘土板の下敷きになります。
本文から分かること
物語は「文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか」と問いかけて始まります。文字の精霊は最初から事実とされず、噂と博士の調査から話が進みます。
博士は一つの文字を見つめ続け、意味のある文字が線の集まりに見える体験をします。やがて同じことが家、人の体、日常の習慣にも起こり、身の回りのものが、意味を持たない部分の集まりに見えるようになります。
博士の統計には、視力、せき、しゃっくり、脱毛といった体の変化や、職人の腕の衰えが並びます。文字に親しむ幸福そうな老人を見つけても、その幸福まで文字の霊の魔力だと説明します。自分の説に合わない例が出ても、考えを改めません。
若い歴史家は、歴史とは過去の出来事か、粘土板の文字かと尋ねます。博士は、書かれなかったことは、なかったことだと答えます。そのあと、自分が文字の力をほめてしまったことに気づき、文字の霊にだまされたと考えます。
最後に博士を押しつぶすのは、地震で倒れた書架と重い粘土板です。語り手はそれを文字の霊による復讐のように語りますが、超自然の仕組みを説明してはいません。
ことばと時代
- アシュル・バニ・アパルの図書館
- アシュル・バニ・アパルは、古代アッシリアの王です。首都ニネヴェの遺跡からは、楔形文字が刻まれた3万点を超える粘土板と断片が見つかっています。作品は、この実在の王と図書館を舞台にしています。
- 楔形文字と粘土板
- 楔形文字は、柔らかい粘土へ葦(あし)の筆を押しつけ、くさび形の跡を付けて書く文字です。本文が図書館を「瀬戸物屋の倉庫」のようだと表すのは、本が重い粘土板だからです。
- 作品の発表
- 『文字禍』は、1942(昭和17)年2月、『山月記』とともに「古譚」という題で雑誌『文学界』に掲載されました。
読んだあとに