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夜長姫と耳男

坂口安吾

作品を、もう少し知る

耳男の二度の制作、夜長姫の笑顔、二度の疫病をめぐる出来事を順にまとめました。

物語を短く振り返る

若い匠の耳男は、師の代わりに夜長の長者の邸へ行き、青笠、小釜と腕を競います。課題は、夜長姫が十六歳になる正月までに、弥勒菩薩の像と厨子を作ることです。耳男は、姫に馬のようだと笑われ、織物をするエナコに両耳の先を切られます。その後、姫の笑顔に負けない恐ろしい化け物を、三年かけて彫ります。姫はその像を選び、耳男の仕事小屋を焼きます。

耳男は次に、姫の笑顔を写した弥勒像を彫り始めます。最初の疫病が広がったとき、化け物は疫病よけとして拝まれます。別の疫病が来ると、姫は耳男に蛇を集めさせ、その血を飲み、死体を高楼(高い建物)へつるしながら、村の人々が死ぬことを願います。耳男は姫を殺さなければ人間の世界がもたないと考え、姫の胸を刺します。姫は耳男に最後の言葉を残し、目を閉じます。

本文から分かること

耳男が最初に作るのは、耳の長い化け物です。命じられた弥勒像とは違い、蛇や動物の血まで使って、姫の笑顔を押し返そうとします。終盤では、姫が耳男の最初の制作をまねます。耳男に蛇を集めさせ、自分でその血を飲みます。

夜長姫の笑顔は、耳男の目を通して繰り返し描かれます。姫はもう一方の耳を切らせる時も、蛇の骨を見る時も、疫病で人が死ぬのを見る時も、澄んだ無邪気な笑顔を見せます。褒賞の場で、エナコが自死したことが明かされます。姫は、エナコの血に染まった着物を耳男の下着に仕立てていました。姫はそこで笑い、長者は青ざめます。その心の中は直接語られず、耳男自身も姫の心を理解できないままです。

化け物を彫る時の耳男は、姫の笑顔を押し返そうとします。二度目の弥勒像では、押し返すのをやめ、笑顔が押してくる力をそのまま表そうとします。同じ姫を前にしても、仕事への向かい方が変わります。

最初の疫病では長者の邸から病人が出ず、化け物は疫病よけとして信仰されます。次の疫病では、化け物を祭った祠(ほこら)にすがって死ぬ人も現れます。本文は、像に病を防ぐ力が本当にあったとは確定しません。

耳男は、姫が生きていることを初めて恐ろしいと考え、最後には自分の判断で姫を刺します。姫の最後の言葉は、好きなものを呪う・殺す・争うことと、耳男の仕事を結びつけます。ただし、その言葉が作品全体の正解だとは書かれていません。

ことばと時代

飛騨の匠
飛騨の木工技術者を指すことばです。奈良時代には、税の代わりに飛騨から都へ出て、宮殿や寺社を造る人々が「飛騨の匠」と呼ばれました。作品の耳男たちも、建物や仏像を作る匠として描かれます。
持仏と厨子
持仏は、身近に置いて礼拝する仏像です。厨子は、その像を納める箱形の入れ物です。長者は、姫が朝夕拝む弥勒菩薩像と厨子を三人に依頼します。
ホーソー
疱瘡、つまり天然痘のことです。作品では最初の疫病をホーソーと呼び、その後、別の疫病が村へ来ます。本文では、二つは別の疫病として書かれています。
作品の発表
『夜長姫と耳男』は、1952(昭和27)年6月1日発行の『新潮』49巻6号で発表されました。
出典と参考資料

読んだあとに

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文字禍中島敦 約17分